「艤装員(ぎそういん)」とは、主に船舶の建造や改修の際に、艤装作業を担当する専門職のことを指します。
艤装とは、船体が完成した後に、エンジンや電気設備、配管、居住設備、航海機器などを取り付けて、船を実際に「使える状態」に仕上げる作業全般のことです。
以下で詳しく説明します。
目次
艤装員の役割とは
艤装とは何か
船はまず「船体(ハル)」が造られます。
これは骨組みと外殻のみの状態で、人が乗るにも、航海するにも十分ではありません。
この状態から、次のような設備を取り付けていくのが「艤装作業」です。
- 機関の取り付け(主機関・補機)
- 電気系統の配線・照明器具の設置
- 配管工事(冷却水、燃料、水道、排水)
- 航海計器・通信装置の取り付け
- 生活空間の整備(厨房、トイレ、寝室)
- デッキ装備(クレーン、係船設備など)
これらを陸上での工事のように、船内で行うのが艤装作業であり、それを担当する人が「艤装員」です。
艤装員の仕事内容
艤装員の仕事は非常に幅広く、多岐にわたります。
以下は主な業務内容です。
配管・配線作業
- 船内の冷却水系統、燃料系統などの配管を取り回す
- 電源系統や制御装置の電気配線を行う
機器の据え付け
- エンジン、ポンプ、発電機、ボイラーなどの機器を所定の位置に設置・固定
- 振動対策や防音対策も含む
居住区・作業区の内装施工
- 船室やブリッジ(操舵室)などの内装仕上げ
- トイレ・キッチンなどの水回り工事
試運転・調整・検査
- 完成後の試運転で機器の動作確認
- 設備の最終調整や不具合対応も含む
艤装員になるには
艤装員は、専門知識と現場経験が重要な職種です。
以下のような経路でなる人が多いです。
- 高卒で造船会社・艤装業者に就職 → 現場で経験を積みながら技術を習得
- 工業高校や高専・専門学校で機械・電気・造船分野を学ぶ
- 配管工・電気工事士などの資格や経験がある人が転職
また、艤装作業はチームプレーが重要なため、現場でのコミュニケーション力や安全意識も大事です。
艤装員の職場環境
- 主に造船所のドックや船内が現場です
- 配管・溶接・高所作業もあるため体力と安全装備が必要
- 作業は多くの業種と連携しながら進める(機関士、電気工、塗装工など)
艤装員の将来性・キャリアパス
艤装員は、造船・海洋開発・防衛産業(自衛艦・潜水艦など)で欠かせない職種です。
特に以下のような道があります。
- 艤装班のリーダーや監督職(艤装主任)
- 施工管理や工事監督
- 技能職として国家資格(配管技能士、電気工事士)を取得
- 熟練艤装員は高待遇で海外案件にも携わることがある
艤装員と他職種との違い
職種 | 主な仕事内容 | 関連する作業領域 |
---|---|---|
船体工 | 鉄板を加工して船の骨組みを作る | 溶接・鉄工 |
塗装工 | 船体や機器に防錆・美観のための塗装を行う | 塗装 |
艤装員 | 配管、機器据付、内装などの取り付け | 機械・配管・電気・設備工事 |
まとめ
艤装員とは、船を実際に動かせる・生活できるように仕上げる職人です。
造船工程の中でも、最終的な品質と使い勝手を左右する重要な作業を担っています。
建築でいえば「内装工事」や「設備工事」に相当し、地味に見えても非常に高度な技術が必要です。
以上、艤装員についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。