船の「ボラード(bollard)」は、港湾施設や船上で使われる係留装置の一種で、船をロープで岸に固定する際に欠かせない設備です。
シンプルな構造ながら、非常に大きな力に耐える必要があるため、素材や設置方法には高い信頼性が求められます。
目次
ボラードとは
ボラード(bollard)とは、以下のような設備を指します。
- 岸壁や桟橋、港の構造物に固定された金属製の柱状の器具
- 船のロープ(係船索)を巻きつけて固定するために使われる
- 通常、鋳鉄、鋳鋼、またはステンレスなどで作られ、非常に頑丈
- 海事以外でも、都市景観の中で車両進入防止用のポールなどを「ボラード」と呼ぶことがあるが、本稿では「船の係留装置」としてのボラードに限定します
ボラードの主な用途
- 係留(けいりゅう)
- 船舶が岸壁や桟橋に接岸する際、船を安定させるためのロープ(係船索)をボラードに結びつけます。
- 荒天や潮の満ち引きに耐えるため、非常に大きな荷重がかかります。
- 荷役作業中の安定保持
- 貨物を積み降ろしする間、船が動かないようにするためにもボラードで船をしっかり固定します。
- 一時停泊や待機中の固定
- 港での順番待ちや燃料補給の際など、短時間でもボラードに係留するケースがあります。
ボラードの形状と種類
ボラードにはいくつかの形状・タイプがあります。
それぞれ使用目的や設置場所に応じて選定されます。
タイプ | 特徴 |
---|---|
T型ボラード(T-head bollard) | 頭部がT字型。大型船に対応。係船ロープが抜けにくい構造。 |
シングルビット型(Single bitt bollard) | 棒が1本だけ立っているシンプルなタイプ。小型船向き。 |
ダブルビット型(Double bitt bollard) | 2本の縦柱が並列しており、ロープの交差に強い。船上によくある。 |
クロスビット型(Cross bollard) | 十字型で、より確実にロープを固定可能。 |
キノコ型(Mushroom bollard) | 上部が丸く広がっており、ロープの滑り防止に優れる。外洋に多い。 |
船上のボラードと陸上のボラード
- 船上のボラード
- 船体構造の一部として取り付けられており、接岸時にロープを引き寄せたり調整したりするために使う
- 通常は操縦甲板の前後に設置され、ロープの取り回しや安全作業に配慮した位置にある
- 陸上のボラード
- 港湾施設側に埋め込まれており、船から投げられたロープを受けて固定
- コンクリート基礎に埋め込まれ、非常に頑丈に設置されている
ボラードの設置と耐荷重
- ボラードは、係船力(mooring force)に耐えるよう設計されています。
- 大型船では、数十トン以上の引張荷重がかかることもあるため、
- 設置時の基礎強度
- 材料の引張強度
- 腐食防止コーティング(防錆塗装や亜鉛メッキ) が重要です。
実際の運用上の注意点
- ロープを掛ける際、船の動きや風向き・潮流を考慮して最適なボラードを選びます。
- 無理な角度で引っ張ると、ボラードが破損したり、ロープが擦れて劣化する原因になります。
- 保守点検が怠られると、腐食や金属疲労でボラードが破損することもあり、事故の原因になります。
関連用語
- ビット(Bitts):船上にあるボラードと同様の機能を持つ装置で、ロープを留める柱。
- 係船索(Mooring Line):ボラードと船をつなぐロープやワイヤー。
- フェンダー(Fender):船と岸壁の接触を防ぐクッション材で、ボラードとセットで使われることが多い。
まとめ
ボラードは、船の係留という基本的かつ重要な作業を安全に行うためのインフラの要です。
単純な構造に見えても、設計・設置・使用方法には細かな配慮と技術が必要です。
大型船の入出港、旅客船の安全確保、貨物船の荷役など、あらゆる海事シーンの裏で活躍している縁の下の力持ちといえるでしょう。
以上、船のボラードについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。