タンカー(特に大型の原油タンカーやLNGタンカーなど)に搭載されているエンジンの「排気量」は、私たちが普段自動車で目にするような単位(例:2.0Lなど)とはスケールが全く異なります。
ここでは、タンカーのエンジンにおける排気量の意味、具体例、そしてその特徴について、詳しく掘り下げて解説します。
目次
排気量とは何か?
排気量(Displacement)とは、エンジンのシリンダー内でピストンが1往復して排出する空気+燃料混合気の体積を意味します。
つまり「エンジンが一度に吸排するガスの量」で、全シリンダーの容積を合計した数値です。
- 単位: 主にリットル(L)や立方センチメートル(cc)、あるいは立方メートル(m³)で表されます。
- 排気量が大きいほど: パワーが出やすいが、燃料消費も増える。
タンカーのエンジンにおける排気量の規模
巨大ディーゼルエンジン(低速2ストローク)
大型タンカーの主機(Main Engine)には、MAN B&WやWärtsiläといったメーカーの2ストローク低速ディーゼルエンジンが搭載されます。
これらのエンジンの排気量は、とてつもないスケールです。
具体例:世界最大級の船舶用ディーゼルエンジン
【例】Wärtsilä RT-flex96C(14気筒)
- 総排気量: 約 25,480,000 cc(≒ 25,480 L ≒ 25.5 m³)
- 1気筒あたり排気量: 約 1,820,000 cc(≒ 1.82 m³)
- ボア(内径): 約 960 mm(96 cm)
- ストローク(行程): 約 2.5 m
- 全長: 約 27 m
- 重量: 約 2,300 トン
- 出力: 約 80,000~108,000 馬力(HP)
このようなエンジンがVLCC(Very Large Crude Carrier)やULCC(Ultra Large Crude Carrier)と呼ばれる超大型タンカーに搭載されます。
排気量が大きい理由とその利点
低回転・高トルクを実現
- 船の推進には大きなトルク(回転力)が必要。
- 低速で大きなプロペラを直接駆動させるため、1分間に100回転以下の超低回転でも巨大な推進力を生む必要があります。
- そのため、1気筒ごとの排気量を極端に大きくすることで、燃焼ガスの爆発力を最大化し、強力な推進力を生み出しています。
排気量と燃費の関係(補足)
巨大な排気量は一見、燃費が悪そうに思えますが、以下のような工夫で効率化されています。
- 2ストロークエンジンで熱効率を向上
- 超低速で運転することで燃費を抑制
- 重質油(C重油など)を使用してコスト削減
また、最近はLNG(液化天然ガス)燃料やハイブリッド方式も登場しつつあり、より環境負荷の少ない船舶用エンジンへの移行も始まっています。
タンカーエンジンの排気量に関するまとめ
項目 | 内容 |
---|---|
エンジンタイプ | 低速2ストロークディーゼル |
排気量 | 約 25,000~30,000 L(25~30 m³) |
気筒数 | 6~14気筒が一般的 |
1気筒あたり排気量 | 1.5~2.0 m³ |
エンジンの長さ | 約 20~30 m |
出力 | 30,000~100,000 馬力超 |
特徴 | 超低回転・高トルク・高効率・耐久性重視 |
まとめ
排気量はエンジン性能の一つの指標に過ぎません。
タンカーエンジンの魅力はその「耐久性」「燃費効率」「推進力」「構造美」など多岐にわたり、巨大な船体を地球規模で動かすインフラの中核を担っています。
以上、タンカーのエンジンの排気量についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。