「船の舵輪(だりん)って何?」「ハンドルとは違うの?」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
舵輪とは、船を操縦する際に舵(かじ)を操作するためのハンドル状の装置のことです。
現在では「操舵輪(そうだりん)」とも呼ばれ、船の進む方向を左右に変えるための重要な装置です。
この記事では、
- 舵輪の意味と役割
- 船での舵輪の仕組み
- 舵輪の構造と各部名称
- 舵輪の歴史と現代の進化
をわかりやすく解説します。
舵輪とは?船で使われる操舵装置の名称
舵輪(だりん)とは、船の舵を操作するための輪状のハンドルを指します。
英語では helm wheel(ヘルムホイール) や steering wheel(スティアリングホイール) と呼ばれます。
舵輪の役割
舵輪は、船尾にある「舵板(ラダー)」を動かすための指令装置です。
操舵手(ヘルムスマン)が舵輪を左右に回すことで、舵取機(ステアリングギア)が作動し、舵板が傾き、船が進む方向を変えます。
つまり、舵輪は船の進路をコントロールする“司令塔”のような存在です。
舵輪の仕組み|船で舵が動くまでの流れ
船の舵輪は、回転運動を機械的または油圧的に舵取機へ伝える仕組みです。
この過程を順を追って見ていきましょう。
操作の流れ
- 舵輪(舵ハンドル)を回す
- 操舵装置(舵取機)が作動し、舵軸を動かす
- 舵板(ラダー)が左右に傾く
- 水流の変化によって船の方向が変わる
舵輪自体は「命令を出す装置」であり、実際に船を曲げるのは舵板です。
船の構造上、ハンドルを回してから反応するまで数秒のタイムラグが生じるのも特徴です。
舵輪の構造|船の舵輪を構成する主な部品
舵輪の構造はシンプルですが、航海の安全を左右する精密な設計になっています。
| 部品名 | 英語 | 役割 |
|---|---|---|
| スポーク | spoke | 舵輪の軸を中心とした持ち手部分。両手で握って回す。 |
| リム | rim | 外周の輪状部分。手で直接回す部分。 |
| ハブ | hub | 中心の回転軸部分。操舵軸(シャフト)と接続。 |
| ナブ | knob | 操作しやすくするための突起(補助グリップ)。 |
古い木製の舵輪では6〜8本のスポークが定番で、近代船では金属製や樹脂製のコンパクトな操舵輪が主流です。
舵輪の種類|船の規模によって異なる操舵方式
船の舵輪は、操舵装置の方式によって次の3種類に分けられます。
機械式舵輪(ワイヤー式)
- ワイヤーやチェーンで舵軸を直接動かす構造。
- 機械的なつながりが強く、反応がダイレクト。
- 小型船・ヨット・漁船で多く使用。
油圧式舵輪
- ハンドルの回転を油圧ポンプに伝え、油圧シリンダで舵を動かす方式。
- 操作力が軽く、大型船や商船で主流。
- 応答性が高く、長時間の操舵でも疲れにくい。
電動式舵輪(電気油圧式)
- ハンドル操作を電気信号に変換して舵取機を制御。
- 自動操舵(オートパイロット)や遠隔操作が可能。
- クルーズ船や軍艦など最新船舶で採用。
舵輪の歴史|木製から電動式までの進化
舵輪の歴史は、船の発展とともに進化してきました。
古代〜中世:櫂(かい)による操船
古代の船は、船尾に大きな櫂(パドル)を取り付けて方向を変えていました。
これが舵の原型です。
18世紀:舵輪の登場
イギリス海軍を中心に、木製の大きな「舵輪」が登場。
舵索(ワイヤー)を介して舵を操作する構造が一般化しました。
20世紀:油圧式・電動式の普及
エンジン船の登場により、より重い舵板を動かす必要が生じ、油圧式舵取機と小型の舵輪が主流に。
現代:電子制御・自動操舵へ
現在では、電子センサーで舵角を自動制御するオートパイロット式舵輪も増えています。
舵輪は単なる「ハンドル」から「精密な操縦インターフェース」へと進化しました。
舵輪と操舵輪・ハンドルの違い
「舵輪」と「操舵輪」は基本的に同義語ですが、使われ方に違いがあります。
| 用語 | 意味 | 主な使用例 |
|---|---|---|
| 舵輪(だりん) | 伝統的な言い方。木製の大きなハンドルを指すことが多い。 | 帆船・歴史的船舶 |
| 操舵輪(そうだりん) | 現代的な言い方。油圧・電動式も含む正式名称。 | 商船・フェリーなど |
| ハンドル | 操作部分の通称。日常的に使われる。 | 小型ボート・プレジャー船 |
つまり、「舵輪=ハンドルの原型」と考えるとわかりやすいでしょう。
舵輪の位置と役割|船橋(ブリッジ)での重要装置
舵輪は、船の「ブリッジ(操舵室)」中央に設置されています。
操舵手はコンパスや航海計器を見ながら、舵輪を操作して進路を維持します。
船の操舵で重要な要素
- 舵輪の角度:舵角を調整し、進路を修正
- 舵角指示器:舵の傾きをリアルタイムで確認
- オートパイロット:設定航路を自動で維持
この3つの連携によって、長距離航行中も正確な操船が可能になります。
まとめ:舵輪は船の“心臓”ともいえる操舵装置
ポイントを整理すると、
- 舵輪とは、舵を操作するための輪状の装置(ハンドル)
- 操作の仕組みは機械式・油圧式・電動式に分かれる
- 船のブリッジで進路変更や微調整を担う中心装置
- 現代ではオートパイロットなど電子制御型が主流
- 舵輪=伝統的な言葉、操舵輪=現代的な正式名称
舵輪は、単なるハンドルではなく、船の安全を左右する重要な“操舵の心臓部”です。
その構造や仕組みを知ることで、海上の操船技術がより深く理解できるでしょう。
以上、船の舵輪についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







