舵取機の仕組みについて

「舵取機(だとりき)ってどんな仕組み?」「ハンドルを回すとどうやって舵が動くの?」

そんな疑問を持つ方も多いでしょう。

舵取機とは、操舵輪(ハンドル)の動きを舵へ伝える装置のことです。

船が安全に進路を変えられるのは、この舵取機が正確に作動しているおかげです。

この記事では、

  • 舵取機の基本構造と役割
  • 油圧式・電動式などの仕組みの違い
  • 作動原理(ハンドル操作から舵が動くまで)
  • 故障やトラブル時の対策

をわかりやすく解説します。

目次

舵取機とは?船の「ハンドル操作」を支える装置

舵取機(だとりき)とは、操舵装置の中心的な機械で、操舵輪の動きを舵軸へ伝え、舵板を左右に動かす役割を持ちます。

英語では「Steering Gear(ステアリングギア)」と呼ばれ、船舶安全法でも必須装備のひとつとされています。

舵取機の主な役割

  • 操舵輪の回転を油圧・機械・電動力で舵へ伝達する
  • 操舵角(舵の角度)を正確に制御する
  • 荒天時や高速航行時でも安定した操舵を維持する
  • 操舵指令を自動操舵装置(オートパイロット)に連携する

舵取機の仕組み|操舵輪から舵板までの力の流れ

舵取機の仕組みを理解するには、力がどのように伝わるかを見るのが早道です。

操作の流れ(基本原理)

  1. 操舵輪(ハンドル)を回す
  2. 操作信号が操舵ポンプまたは電気信号に変換される
  3. 舵取機(油圧シリンダやギア)が作動
  4. 舵軸(ラダーストック)が回転
  5. 舵板(ラダーブレード)が左右に動く

つまり、ハンドルを回すと、舵取機が動力を増幅して舵を動かす――これが基本の仕組みです。

舵取機の構造|主な部品と名称

舵取機は、以下の主要部品で構成されています。

部品名役割
操舵輪操舵指令を出すハンドル
操舵ポンプ操作を油圧または電気信号に変換
舵取機本体油圧やギアで舵軸を動かす中心装置
舵軸舵板を回転させる軸
舵板水流を受けて船の方向を変える板
リミットスイッチ/舵角指示器舵の角度を計測・表示する装置

舵取機の種類とそれぞれの仕組み

舵取機には、船の規模や用途に応じて3つの方式があります。

それぞれの仕組みを理解しておくと、メンテナンスや点検時にも役立ちます。

機械式舵取機の仕組み

最もシンプルな構造で、ワイヤーやチェーンを使ってハンドルの力を直接舵に伝えるタイプです。

  • 操作力:人力
  • 構造:操舵輪 → チェーン → プーリー → 舵柄
  • メリット:構造が簡単で故障が少ない
  • デメリット:大きな船では操作が重く非効率

使用例:小型ボート・漁船・ヨットなど。

油圧式舵取機の仕組み

中〜大型船で主流のタイプで、油圧ポンプとシリンダを利用して舵を動かします。

動作の流れ

  1. 操舵輪を回すと、油圧ポンプが作動
  2. 油の圧力が油圧シリンダに伝達
  3. シリンダが舵柄(ラダーアーム)を押す/引く
  4. 舵軸が回転し、舵板が動く
  • 操作力:油圧による補助(少ない力で舵が動く)
  • メリット:強力・正確・応答性が高い
  • デメリット:オイル漏れやエア混入に注意が必要

使用例:商船・フェリー・タンカーなど。

電動式舵取機(電気油圧併用型)の仕組み

最新型の船舶で採用されている方式で、電気信号を油圧バルブに伝える電子制御式です。

  • 操舵輪 → センサー(電気信号) → サーボモーター → 油圧装置 → 舵板
  • メリット:自動操舵(オートパイロット)や遠隔操作が可能
  • デメリット:電気系トラブル時は非常操作が必要

使用例:大型フェリー・クルーズ船・軍艦など。

※現在では油圧+電気制御の「電気油圧式(Electro-Hydraulic Steering Gear)」が主流です。

舵取機の仕組みを支える「油圧回路」

油圧式舵取機では、以下の要素が力の伝達を支えています。

部品役割
油圧ポンプ操舵力を油圧に変換する
油圧シリンダ油圧エネルギーを直線運動に変換
油圧バルブ油の流れを制御し、舵角を調整
油圧タンク作動油の貯蔵と冷却
圧力計・安全弁過圧を防ぎ、装置を保護

この油圧回路によって、舵は滑らかかつ正確に作動します。

舵取機の仕組みにおける安全装置

船舶の操舵装置は、安全確保のために二重化・バックアップ構造が義務づけられています。

主な安全機構

  • 二系統油圧ポンプ:片方が故障しても操舵可能
  • 非常操舵装置(Emergency Steering):後部デッキなどから手動で舵を動かす仕組み
  • 舵角制限装置:舵板の過回転を防ぐ
  • 自動復帰装置:舵が中立位置に戻る仕組み

これらにより、航行中でも故障リスクを最小限に抑え、安全運航を維持できます。

舵取機のトラブル例と対策

トラブル内容主な原因対策
舵が動かない油圧漏れ/ポンプ故障油量確認・ポンプ点検
操舵が重いエア混入・バルブ詰まりエア抜き・フィルター清掃
舵が戻らないシリンダ摩耗・リンク固着部品交換・潤滑油補充
警報が鳴る油圧低下・電気異常圧力・電圧チェック

定期点検と作動テストが、舵取機の安全運用には欠かせません。

まとめ:舵取機の仕組みを理解すれば操船の基礎が見える

ポイントを整理すると、

  • 舵取機は操舵輪の動きを舵に伝える「心臓部」
  • 機械式・油圧式・電動式の3方式がある
  • 油圧式が中大型船の主流で、電気油圧制御が進化中
  • 二重構造や非常装置で安全を確保している

舵取機の仕組みを理解すると、船がどのように“思い通りに曲がる”のかが、よりクリアにわかるはずです。

操船の学びを深めたい方は、次に「舵の構造」や「舵の種類」もチェックしてみましょう。

以上、舵取機の仕組みについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

船の塗装や修理のご依頼は、東備ヤンマー株式会社にお任せください。

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