大型船のヘリポート(英語:helipadまたはhelicopter deck)は、船上でヘリコプターの離着陸を行うための専用エリアです。
特に軍艦、石油・ガスプラットフォーム支援船、探査船、クルーズ船、豪華ヨット、病院船などに設置されています。
この設備は、乗組員や乗客の輸送、物資の運搬、緊急時の救助活動など、多様な目的で使用される重要なインフラです。
目次
ヘリポートの基本構造と配置
位置
- 船尾(後方)に設置されることが多い
- 船体の揺れが比較的小さく、ヘリの着陸が安定するため。
- 船首や上部構造物の上に設けられることもありますが、風の影響や重心の問題から慎重に設計されます。
材質と構造
- 強化されたスチール製またはアルミ合金のデッキ。
- ヘリの重量を支えるため、補強構造(リブやフレーム)が内蔵。
- デッキ表面は滑り止め加工がされており、高温・高湿・潮風への耐久性が求められます。
サイズ
- 使用するヘリコプターのサイズによって異なりますが、以下が一般的です。
ヘリの種類 | 推奨デッキ直径 |
---|---|
小型ヘリ(例:Bell 206) | 約12~15m |
中型ヘリ(例:S-76) | 約18~22m |
大型ヘリ(例:S-92, CH-47) | 約25~30m以上 |
設備・システム
ヘリポートは単なる平らな空間ではなく、多数の機能を備えています。
着陸誘導システム
- デッキ周囲にはLEDの着陸誘導灯(Hライト)
- 夜間飛行や悪天候時の視認性向上
- 一部はレーダービーコンや自動誘導装置を備える
燃料補給設備
- ジェット燃料(Jet AまたはJP-5)を安全に保管する燃料タンクと給油設備
- 火災リスクを考慮した防爆仕様の設計
消防・安全装備
- フォーム消火器、CO2消火設備
- 緊急時のヘリコプタークラッシュ対応キット
- 海中への脱出スライドや救命ボートも周辺に設置されることがあります
通信・ナビゲーション支援
- 船とヘリとの専用無線通信設備
- 天候・風速・方位情報などのリアルタイム提供
活用例
軍用艦艇
- 護衛艦や駆逐艦、巡洋艦にヘリポートを装備
- 対潜ヘリ、偵察ヘリが運用され、索敵や救助任務を担う
石油・ガス支援船(OSV)
- 沖合のプラットフォームと陸地を結ぶ手段として、作業員・物資をヘリで運ぶ
- 悪天候や高波で船が接岸できない場合も、ヘリポートが活躍
クルーズ船・豪華ヨット
- VIPの上陸・乗船のためのラグジュアリー用途
- 緊急医療搬送にも活用
病院船・災害支援船
- 救急搬送、医療支援のための緊急着陸設備として
安全性と運用の課題
- 海上の風、波、傾斜(ピッチング・ローリング)が離着陸に大きく影響
- 操縦士には特殊な訓練が必要
- 船側も航空管制レベルの運用マニュアルを持つことが望ましい
- ヘリの事故は船体にも重大な被害をもたらすため、厳格な点検と訓練が必須
トリビア・補足知識
- “H”マークが描かれた円形のデッキが典型。これは”Helicopter”の略。
- 軍用艦では、格納庫(Hangar)があり、ヘリを格納・整備可能なケースも。
- 国際基準(ICAOやIMO)の船上ヘリポート設計基準に準拠している必要あり。
- アメリカ海軍の空母などは「フルデッキ」型で、数十機のヘリや戦闘機が同時運用可能。
まとめ
大型船のヘリポートは単なる「離着陸のための場所」ではなく、航空運用、救急医療、資材輸送など、海上活動におけるあらゆる機動性と即応力を支える戦略的な設備です。
用途に応じて高度に専門化され、安全性や利便性の確保のために多くのテクノロジーと設計思想が注ぎ込まれています。
以上、大型船のヘリポートについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。