帆船のマストの構造について

マスト,イメージ

帆船のマストは、帆を張って風の力を受けるための柱状の構造であり、船の推進力を得るために極めて重要な役割を果たします。

マストは単に柱ではなく、帆・索具(ロープ)・艤装(ぎそう)・滑車など多くの要素と連携して成り立っています。

その構造や種類、機能は帆船の形式によって異なりますが、以下に一般的なマスト構造を詳しく解説します。

目次

マストの基本構造

単一マストと複数マスト

  • シングル・マスト船:ヨットなど小型船に多い。メインマスト(Main Mast)のみ。
  • マルチ・マスト船:大型の帆船では2~5本のマストを持つ。
    • 2本:ブリッグ(Brig)
    • 3本:バーク(Barque)、フルリグド・シップ
    • 4本以上:クリッパーや商船などに見られる

マストの部位構成(縦方向)

マストは基本的に一本の柱ではなく、上下に複数の段に分かれた複合構造になっています。

ロワー・マスト(Lower Mast)

最下部の太い柱で、デッキから船体内部まで突き刺さる構造。

最大の荷重を受け持つ。

トップマスト(Topmast)

ロワー・マストの上に立てられる中間マスト。

これにより帆の面積が増やせる。

トップギャラント・マスト(Topgallant Mast)

さらにその上にある細身のマスト。

大洋横断型の帆船によく見られる。

ロイヤル・マスト(Royal Mast)

最上段に位置し、小さな帆を支える。

軍艦や高速帆船に見られる。

マストを支える要素

マストは単独で立っているのではなく、多数の索具(rigging)と構造物によって安定を保っています。

固定索具(Standing Rigging)

マストを固定・支えるロープまたはワイヤー。

  • シュラウド(Shrouds):マスト左右に伸びて側方を支える。
  • ステイ(Stays):前後に張られ、マストを倒れないよう支える。
    • フォアステイ(前方)、バックステイ(後方)

可動索具(Running Rigging)

帆の操作に使うロープ類。

  • ハリヤード(Halyard):帆を揚げる
  • シート(Sheet):帆の角度を調整
  • ダウンホール、アウトホールなど:帆の形状調整

マストの素材と構造

木製マスト

  • 伝統的帆船で使用される。オーク、スプルースなどが主流。
  • 単木(一本の丸太)ではなく、複数の木材を合わせて強度を出す「複合木マスト」が主流。

鉄製・鋼製マスト

  • 19世紀以降の軍艦や大型商船で使用。
  • より高く、軽量で頑丈な構造が可能。

現代のFRP・カーボンマスト

  • 現代ヨットや競技帆船ではFRP(繊維強化プラスチック)やカーボンファイバーが一般的。
  • 空力性能、軽量性、強度に優れる。

マストと帆の関係性

各マストにはそれぞれに割り当てられる帆(セイル)があり、帆の配置によって帆走性能が大きく変わります。

横帆(Square Sails)

  • マストに対して直角に張る帆
  • 風を後方から受けて進む(追い風向き)

縦帆(Fore-and-aft Sails)

  • マストに沿って張る帆(ラテンセイル、スルセイルなど)
  • 向かい風でも斜めに進める(風上航行可能)

実例:三本マスト帆船のマスト構成

三本マスト帆船では以下のような命名になります。

位置マスト名称主な帆
一番前フォアマストフォアセイル、トップセイル等
中央メインマストメインセイル、トップセイル等
後方ミズンマストミズンセイル、スパンカー等

各マストにはそれぞれ上下複数の帆がつくため、10枚以上の帆を持つことも珍しくありません。

まとめ

マストはただの「帆を支える柱」ではなく、風という不安定な自然力を受けて推進力に変換するための精密な構造体です。その設計には、

  • 荷重バランス
  • 操作性
  • 材料の柔軟性と強度
  • 船体との連携構造

といった高度な知識と技術が必要とされます。

以上、帆船のマストの構造についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

船の塗装や修理のご依頼は、東備ヤンマー株式会社にお任せください。

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